デジタル人文学

それでも高度なデジタルアーカイブを提供したい時は:「一次公開」「二次公開」とIIIF

以下の、前回記事の続きです。 digitalnagasaki.hatenablog.com こちらの記事では、新しいことや難しいことをすると大変だ、という話ばかり書きましたので、がっかりした人もおられるかもしれません。 たしかに、良コンテンツを持っているところでなければ高…

「デジタルアーカイブ」構築のロジと専門知識

いわゆる「デジタルアーカイブ」があちこちで構築されるようになってずいぶん経ちます。ジャパンサーチが登場したことで、とりあえず構築した後にメタデータを提供すれば、利用者に発見してもらえる可能性も高まってきました。これからますますデジタルアー…

『般若心経』の敦煌写本@フランス国立図書館を大正新脩大蔵経と比較できるツール

このところ、少しずつ時間をみつけて改良を続けている、「大正新脩大蔵経と他の木版・写本を簡単に比較できる仕組み」ですが、表示を高速化できるように色々工夫を行いまして、割とお待たせせずに表示できるようになりつつあります。 それから、「木版大蔵経…

デジタルデータの長期保存:iPRES2022 基調講演の日本語訳が公開されました

デジタルデータはなくなってしまいやすい…という話を時々耳にします。実のところ、紙媒体と同じくらいの手間をかけてよいのであればデジタルデータの持続可能性は十分に高いと思うのですが、そうだとしても、よりよくきちんと長期保存するためには何らかのル…

AIの助けを借りて蔵書印を解読/蔵書印ツールコレクションの公開

このたび、一般財団法人人文情報学研究所より、「蔵書印ツールコレクション」が公開されました。 https://seal.dhii.jp/ 構築の経緯など、詳しくは「蔵書印ツールコレクションについて https://seal.dhii.jp/about/」をご覧ください。 このツールコレクショ…

TEI用ビューワでローカルPC上の画像を表示するには(画像ビューワ組込み編)

「TEI用ビューワでローカルPC上の画像を表示するには」 の続編、今度は画像ビューワ組込み編です。この辺からちょっとややこしくなってきます。 まず、画像ビューワとして OpenSeadragon を組込みます。そのためには… なんでもいいのでサンプル画像を用意し…

書誌情報作成/図書館情報学/デジタル・ヒューマニティーズ/デジタルアーカイブに関心がある方々におすすめの講演会

2月の18日(土)と21日(火)、連続講演会「TEI (Text Encoding Initiative) × Library が拓くデジタル人文学と図書館の未来」が開催されます。 ケンブリッジ大学の、デジタル図書館の責任者であるHuw Jones氏と中東専門部門長のYasmin Faghihi氏をお招きし…

TEI/XML利活用の基礎:PythonでTEI/XMLファイルの地理情報を地図上にプロットする

プログラミング言語Pythonは、自然言語処理のライブラリが充実しているので、自分のメインの言語ではなかったのですが、10年くらい前に、授業で教えられるくらいの勉強をして、授業で教えたりしていました。その後、ディープラーニングへの入口として注目さ…

人文学のためのテキストデータ構築入門を教科書として使う場合

『人文学のためのテキストデータ構築入門』は、表題の通り、人文学のためのテキストデータ構築全般についての入門書という位置づけの本ですので、教科書として使っていただくこともできます。ただし、色々な要素を含んでいますので、用途に応じて取捨選択し…

TEI準拠テキスト作成の入門セミナーを実施します

2022年10月10日、11:00~17:00(昼休みは12:30-13:20くらい)に、オンライン(Zoom)にて、TEI入門セミナーを実施します。 「人文学のためのテキストデータ構築入門」の第2部の第四章を中心に、TEIによるマークアップ手法について解説します。本で独習するこ…

シェイクスピア戯曲の文法的特徴を簡単に調べてみる

本日は、英語コーパス学会のワークショップで、「はじめてのXML」のお話をさせていただきました。コンセプトとしては、「とりあえずXMLはどういう風に良いものなのかを見ていただき、自分でやってみたい人はあとで録画をみていただく」ということで、パワポ…

人文学のためのテキストデータ構築の国際デファクト標準、初の日本語による入門書

https://bungaku-report.com/blog/2022/07/tei1.html 初めての日本語によるTEIガイドラインの入門書が刊行されました。『人文学のためのテキストデータ構築入門』[1]というタイトルで、株式会社文学通信によるものです。TEI ガイドラインは、人文学のための…

SSH Open Marketplace:欧州の人文・社会科学分野の研究資源カタログはクラウドソーシングのようでした

欧州では European Union’s Horizon 2020 project の下、研究インフラの構築が盛んに行われています。 European Research Infrastructure Consortium (ERIC) を中心として進められているようで、 基本的には理工系の話なのですが、欧州では人文・社会科学に…

日本学術会議の公開シンポジウムで人文・社会科学のデジタル研究基盤がテーマとなります

今度の土曜日、1/22に、日本学術会議の公開シンポジウム「総合知創出に向けた人文・社会科学のデジタル研究基盤構築の現在」が開催されます。 日本学術会議には「分野別委員会」があり、それぞれの委員会が分科会を設置して特定のテーマについて議論します。…

人文学研究者必読の第六期科学技術・イノベーション基本計画のポイントを確認してみる

科学技術基本法は、しばらく前までは「科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)」という 文言で人文学を除外していましたが、令和3年4月、「科学技術・イノベーション基本法」に変更されて 施行され、これにともない、人文・社会科学が含ま…

般若心経をブラウザに読んでもらう(+簡単Javascript解説)

もうすぐ50歳になるおじさんなので、新しい情報にはかなり疎くなっております。若者達から色々教えてもらうように心がけているのですが、もう記憶力が弱いのか、周囲があまりカバーしてないのか、はたまた、色々問題があって人に言うほどではないと思ってし…

人文系研究者はデジタルに手を出しても評価されない?

(2021/07/06 午前、追記あり) 海外ではデジタル・ヒューマニティーズ(DH)が普及しつつあるのに日本では…という話は最近よく聞きます。 日本でDHについての話題が出ると、人文系のベテラン研究者の方々からは 「しかしデジタルに手を出しても評価されない…

人文学向け電子テキストガイドラインTEI/XMLに準拠したファイルをPHPで処理するにあたって

人文学向け構造化ルールであるTEI/XMLガイドラインに準拠して作成したファイルは、とにかく色んな方法で処理して その都度必要な状態にして利用できるのが魅力です。それについて書き始めると長くなるので詳しくは 以下のページなどをご覧ください。 bungaku…

Webで地図上にマーカーを載せたりグルーピングしたりする方法

地図上にマーカーを載せたり、マーカーをグルーピングしたりする機能、最近はかなり流行ってますね。 Wikipediaの充実等により地図上の座標情報を簡単にとれるようになってきてデータ作りが簡単になってきたというのと、 自由に使える地図がかなり使いやすく…

この5年ほどのデジタル・ヒューマニティーズ学会の発表者の動向(+Palladioの使い方)

デジタル・ヒューマニティーズ(DH)学会といえば、ADHO (Alliance of Digital Humanities Organizations)で開催している年次国際学術大会が最大級です。「デジタル・ヒューマニティーズ」を冠するようになったのは2006年パリ大会からですが、その前から、欧…

「人間文化研究情報資源共有化研究会」への期待

明日、3/12(金)は、デジタル人文学/人文情報学に関する重要なイベントが2つあります。 片方は人文学の研究データの基盤の話、もう片方は研究データをどのように展開するか、というテーマを 扱うようで、この二つが重なってしまうのはなかなか残念なことな…

3D学術編集版:人文学の研究成果/研究環境としての3D構築

このところ、3Dに関する取り組みがデジタル・ヒューマニティーズの世界でも見られるようになってきました。この週末には人文学と3Dをテーマとしたイベントも開催されるようで、いよいよ盛り上がりが始まる気配を感じさせます。 ではデジタル・ヒューマニティ…

TEIガイドラインにルビが導入:人文学向け国際デファクト標準に沿った日本語テキストデータの作成が容易になりました

人文学向けデジタルテキスト作成の国際デファクト標準、TEIガイドラインでルビが導入されました 2月25日付けで、TEI協会が策定・公開している人文学資料のデジタル構造化の国際デファクト標準である TEI ガイドラインの version 4.2.0がリリースされ、 日本…

CLARIN-ERIC/欧州の言語資源データインフラについて

欧州の言語資源データインフラとして運用されているCLARIN-ERICについて、ちょっと言及しなければならないかもしれないので 、CLARIN in a nutshell | CLARIN ERIC から、少しメモをしておきます。 CLARIN は、"Common Language Resources and Technology In…

Methodological Commons: デジタル人文学で昔から定番の話

前回のブログ記事では、最近回顧されているデジタル人文学の話題としてScholarly primitivesを採り上げてみましたが、そうなってくると、そもそもデジタル人文学の基礎的な概念として常に採り上げられる Methodological Commons(方法論の共有地) について…

Scholarly primitives: 最近デジタル人文学で話題になっている話

欧米のデジタル人文学業界も、最近はオンライン会議がよく行われるようになったり、SNSでの発信もますます活発化したりして、海外に行かなくても海外の様子が垣間見えることが増えてきました。 そこで気づいたことの一つが、かつて話題になっていたScholarly…

「デジタル人文学」以前の日本の人文系デジタルテキスト研究を探訪してみる

本日、日本デジタル・ヒューマニティーズ学会(JADH)の年次国際学術大会JADH2020が終了しました。リアル開催の予定だったものがバーチャルに途中で変更になり、日程も少し後ろに動かして、それでもなんとかきちんと開催でき、それほど人数は多くないながら…

デジタルアーカイブ学会賞授賞を機に『日本の文化をデジタル世界に伝える』を改めてご紹介

昨秋、『日本の文化をデジタル世界に伝える』という著書を刊行した。このブログでは刊行の経緯について触れたことがあり、また、大学院生の方々による紹介記事を掲載したことがあったが、内容について、自分ではあまり触れなかった。この本が、ありがたくも…