新規開発されたJ-Stageの全文XML作成ツールにお付き合いした話(その2)

さて、前々回の記事の続きです。前回記事から引用すると、

総合的にみて現在おすすめのワークフロー

というわけで、J-Stageで全文XML登載をするにあたって、当方でおすすめの作業の流れは、大体以下のような感じです。

ワードで、全文XML作成ツールに沿ったスタイルを設定する。

全文XML作成ツールにワードを読み込ませてXMLファイルを作成し、それを「エクスポート」する

エクスポートされたzipファイルを開いてXMLファイルをXML エディタ(Oyxgen XML Editor(有料)やVisual Studio Code + Scholarly XMLプラグイン(無料)等)に読み込ませてJATSスキーマを割り当てて編集作業をする。

作業中は、全文XML作成ツールのXML編集画面を開いておき、適宜XMLエディタで作業中のソースを貼り付けてvalidationやHTMLプレビューを行う。

一通り作業が終わったら、zipでまとめなおしてJ-Stageに一括アップロード。

ということだったのですが、一つ、このワークフローの外側の、しかし重要なワークフローの問題として、できればJ-Stageになんとかしてもらいたい課題があります。

J-Stageでは、XMLファイルの他にPDFファイルの掲載を要求します。通常であれば、XMLファイルがあるのだからそこからPDFを 生成すればよいのではないかと思うところ、そういう仕組みが今のところ用意されていないため、全文XMLファイルを作っても、 結局、自前で別途、PDFファイルを作成しなければなりません。結論から言うと、貧乏な学会だと、ワードで整形して PDFに変換、ということになります。それだったらわざわざ全文XMLファイルを作成する意味はどこにあるのか…という ことになってしまいそうです。

こういう時にどうするのかというと、お金があれば アンテナハウス社の AH Formatterというソフトを買えばよいのですが、10万円ほどかかります。 これは、専門企業が業務のために購入するなら割と無理のない金額だと思いますし、APC30万円の時代からすると 全く些細な金額のようにも見えますが、元々、お金がなくて J-Stageを使うという話なのですから、こういう高額な上に使い方を調べるのも大変そうなソフトウェアを購入するのは なかなか難しく、どちらかといえば簡単に手が出せるような代物ではないということになってしまいそうです。

元々、J-Stageは専門企業(にお金を払って論文編集を依頼できる学会)向けのサービスなのだと割り切れば、 それはそれでいいのかもしれないとも思うのですが、 全文XML作成ツールのようなものを作って門戸を広げようとするのであれば、むしろそのあたりももう少し手厚くしていただけると いいのではないかと思うところです。

もちろん、JATS本家が提供している変換ツールもあるにはありますが、日本語対応が十分でないので、そのあたりで 少しJ-Stageの独自性を発揮していただけるとありがたいなあと思うところです。

つまり、AH Formatterほどきれいなものでなくてよいので、J-Stageが、簡素なPDFファイルを全文XMLから生成してくれるような ツールを提供してくれれば、そのあたりの効率も一気にあがって(=全文XMLファイルだけを作成すれば済む)、 全文XMLを採用するところも少し増えるのではないでしょうか、ということです。

それから、一連のやりとりを経て思ったのは、J-Stageセンターへの問い合わせのメールが先方に届いたか、 担当者が読める状態になっているかどうか(迷惑メールなどに仕分けされてないか)、といったことがそもそも よくわからなくて不安に包まれたまま返事が来るのを半日~数日待つという状況が続いたので、 とりあえず着信を知らせる自動返信メールがあるとありがたいと思ったのでした。

J-Stageセンターへの問い合わせメールに関して言えば、もう一つお願いしたいことがあって、 「回答をいつ頃出せるのか」という返事をなるべくはやくいただきたい、ということです。 現状だと、回答が来てから次の作業時間をスケジューリングすることになるので、 そもそも作業スケジュールが組めないという状況になってしまっています。 専門企業ならそれでもなんとかできるのかもしれませんが、J-Stageへの論文登載を 本業としていない者にとっては、作業時間の確保がそもそも大変なので、次に 取りかかれる時間を確認できることは結構大事で、逆に、少し遅くなっても、 回答が来る時間の目安があれば、(今回は16時頃、とか、これは時間かかりそうだから 翌々営業の夕方、とかでよいので)、作業スケジュールをちゃんと組めるように なるので、結果的に、効率的にできます。そのあたりもご配慮いただけるとありがたいと思っておりますし、 そういうことに取り組むことで、実質的な専門企業向けサービスという状況から脱することも できるかもしれません。(と言っても、元々そういう志向であるなら特に問題ないのかもしれませんが…)

J-STAGEに期待すること

ということで、全文XML作成を広めるということであれば、それにあたってJ-Stageに期待することをまとめると、

  1. 全文XML作成ツールでは、無理してXML編集機能を充実させるよりも、XML編集に関してはvalidation+アルファくらいに 済ませておいて、それ以外の細かな編集作業は外部のXMLエディタを利用しやすいような支援体制を整える。(XML編集ツールに あんまりお金をかけすぎないでほしい)

  2. XMLからHTMLへのJ-Stage独自の変換ルールをアクセスしやすい形で提供していただきたい。(主に修飾用タグの適用範囲など?)

  3. J-Stage独自のタグ利用制限について、確認しやすい形で提供していただきたい(独自のカスタマイズスキーマファイルをDTDやRNG等で配布するなど)。(主に、前出のyearタグやsourceタグの制限など)

    • これは、全文XML作成ツールの編集画面に貼り付けてvalidatorを使え、ということならそれでもいいですがその場合、なるべく本番サーバと同じ変換ルールにしていただきたい。
  4. 全文XMLを作成したら、別途PDFを作らなくても済むようなソリューションを、簡単なものでいいので用意してもらいたい。

  5. J-Stageセンター宛ての問い合わせメールは自動返信でよいのでとりあえず着信の知らせをいただきたい。

  6. J-Stageセンター宛ての問い合わせメールの、返事を出すまでの時間の目安をなるべくはやく知らせてほしい。

以上、J-STAGE関係者のみなさまがこういった点についてもご検討くださるとありがたいと思っております。