LMSに教材をアップできればJ-Stageでオンライン論文公開はできるはず

このところ、J-Stageにかかりきりです。あまりお金のない学会の論文誌の編集作業を引き受けてしまっていて、それでいながらちょっと面倒なことに手を出してしまったためなのですが、ちょうどいい機会なので、表題の件について書いておきたいと思います。

「LMSに教材をアップできればJ-Stageでオンライン論文公開はできるはず」

です。

このコロナ禍で、オンライン論文のありがたみが身にしみている人が多いと思います。そして、自分の学会の論文も、もうオンライン公開してしまってよいのではないかと 思っている人も極めて多いのではないかと思います。では、どうすればいいのか。お金もかかりそうだし時間もかかりそうだし…。と考え始めたら、まずは J-Stageを検討してみるのが今のところは極めて重要です。J-Stageは、学会活動をきちんと行っているところが申し込み手続きをすれば、 無料で論文公開をさせてくれます。バックナンバーの登載もさせてくれるようですので、何らかの方法でPDF化して書誌情報を用意できれば、あとはなんとかなります…が、 とりあえず、表題の件に戻りまして、

自分で書いた論文をオンライン公開する場合です。もちろん、編集管理の権限は学会単位で付与されますので、普通は編集担当者しか 論文公開はしませんし、ページ番号を連番にしたければ、やはり公開は担当者に任せるのが安全です…が、敢えて、表題の件を考えて みたいと思います。

J-Stageでは、学会に対して付与された雑誌管理者アカウントを用いて、編集搭載者のアカウントを作成することができます。 もしかしたらアカウント数に上限があるかもしれませんが、それはおいおい確認するとして、とりあえず表題のことをする ためには、著者に編集登載用アカウントを発行してしまうという手があります。そして、著者に対して「論文登載してね」 というわけです。ページ番号連番にならないよ!?という話がありますが、これには、情報処理学会研究報告方式(と私が 呼んでいるもの)がありまして、雑誌につけられる巻(Vol.)号(No.)のうち、号(No.)の方を1論文単位で付与して しまうのです。そうすると、一つの巻に載っている論文が8本あったら、Vol.1 No.1~Vol.1 No.8ということになります。 これにより、すべての論文は1ページ目から数えられることになるわけです。紙で出す雑誌だとええっ!?となりそう ですが、電子媒体ならそんなに気にしなくても大丈夫です。あるいは、すでに紙で出したものをPDF化して出すだけ、 ということであれば、そもそもページ番号もすでについているはずですので、むしろ話は簡単になりそうです。

さて、そうすると、たくさんのアカウントができて大変なのでは、とか、いつまでもやらない人が出てくるのでは、 などと運用上の課題が色々気になってきますが、J-Stageの賢いところの一つに、 アカウントの有効期限が設定できるようになっているという点がありまして、しめきりを設定してそれまでに 論文登載しなかったら終了、ということもできるようです。

というわけで、雑誌編集担当者が、巻(Vol.)号(No.)を設定して、各著者のアカウントを設定し、 「みなさんそれぞれ巻号を割り当てますので、そこに自分の論文をアップしてください」とお願いしたとすると… あとは、表題の通り、今年度に入ってみなさん急にガンガン使うようになったLMS、あそこに教材を アップロードする話とほとんど同じです。アップロード用Webサイトにアクセスしてログインして、 あとは、タイトルつけて、著者名つけて、検索しやすいようにする キーワードは面倒ならつけなくてもよくて、概要をつけるのは自分で書いたものなのでそんなに 難しくないですね。参考文献リストも載せろと言われますが、実は載せなくても論文の アップロードはできてしまいます。とはいえ、自分がお世話になった論文の価値を高めることに つながりますので、参考文献リストはできれば載せた方がよいです。で、あとは論文PDF ファイルを選択して、ポチっとすると、まあ大体OKです。公開日設定もする必要がありますが、 それくらいは、雑誌編集担当者に頼んでもそんなに大変な仕事ではないでしょう。

これでできあがりです。同じ雑誌に載せるみんなが載せてくれればまとめて公開できてありがたいですが、 ここでも、巻号を別にしている上に「早期公開」機能もあるので、作業をいつまでもしてくれない 人がいたら、その人は残して先に公開してしまってもよいのです。

もしかしたら、J-Stageとしては、各著者にアカウントを発行するようなやり方は推奨してないかも しれませんが(もしそうだったら申し訳ありません…)、それほど状況は身近なところに来ているし、 わざわざ予算を取りに行く必要もない、むしろ、それにかかる時間と手間があればアップロードは 終わってしまうこともありそうです、 ということで、ちょっとご紹介してみた次第です。

なお、大量のバックナンバーを公開したいとか、大量の論文を事務局で引き受けてアップロードしたい、 あるいは、高度な全文検索もできるようにしたい、などの状況がある場合には、そういうファンドを なんとかして調達した後に、企業にご相談するのが 早道です。現在、學術雑誌を印刷刊行してくれる印刷会社の多くが「 学術情報XML推進協議会 - XSPA 」という ものを結成してJ-Stageに対応したり大量一括処理したりするためのノウハウを蓄積共有している ようですので、ここのリストにあがっている印刷会社に相談すれば、あとは予算確保をするのみ、 という感じになろうかと思います。

しかしながら、それを自分(たち)でやりたい、あるいはやらざるを得ない、という場合には、 またいろいろな道が出てきます。次回(あるいはそのうち)、元気があれば、私がかかりきりになってしまっている、 高度な全文検索ができるようなアップロードの仕方の話も書いてみたいと思います。