IIIF対応デジタルアーカイブのサーバを更新・更改・アップデートする際に気をつけていただきたいこと

デジタルアーカイブのシステムは、依拠しているOSやサーバソフトウェア、開発フレームワークのアップデートや機器のハードウェアの寿命等により、概ね5年程度で更新しなければなりません。2018年頃から日本でも広まってきたIIIF対応デジタルアーカイブのサーバも、そろそろ各地で更新・更改・アップデートの時期を迎えているかと思います。その際に、担当者の方々に気をつけていただきたいことがあります。それは、URIを変えないでいただきたい、ということです。これは、IIIF Imageサーバや IIIF maunifest URIだけでなく、 IIIF Presentation APIの中の Canvas URIも変更されると困るものの一つです。

とはいえ、担当者の方々が、「変えないように自ら作業する」ことは基本的にないと思いますので、これは、発注時に仕様書に書いたり、担当企業にきちんと伝えていただきたい、ということです。

これまで、すでにいくつかうまくいかなかった事例がありますが、なかには、最初に導入する際に、「システム更新すると同じURIを維持できないような設定」をしてしまっている企業もあるようです。技術的には、HTTPリダイレクトをすることによって解消できる場合もありますが、ですので、最初の導入時、あるいは、それが間に合わなければ次の導入時に、URIを変えずに済むようなシステム導入の仕方をしていただく、ということになります。

特に変えてしまうとまずいURIは、具体的には、以下のものです。

IIIF Image API URI

IIIF manifest URI

IIIF manifest の中の Canvas URI (何ページ目の画像かを表す)

IIF manifest の中の AnnotationPage URI (IIIF Presentation API version3の場合)

これに加えて、IIIF manifestをバージョン2からバージョン3にアップデートするときは、 同一のIIIF manifest URIで入れ替えをしてしまうと、外部からの内部リンクが切れてしまうので、バージョン2を残したままでバージョン3を新規に別のURIで作成してください。

これがうまくできないと、結局、IIIFに準拠して作成された研究データの寿命がシステム更新とともに終わってしまう、ということになります(実際、某大学図書館のデジタルアーカイブを対象に相当人件費をかけて作成したものがすでにダメになってしまったので途方に暮れております)。目立つ事例としては、各地の絵巻から顔画像を切り出したURIのデータが、IIIF Image API URIが変わったことによってまったくアクセスできなくなってしまった、というものもありました。

昨今、大学図書館ではデジタルアーカイブを研究データの一環として扱ってくださるような流れもできているようでありがたく思っておりますが、研究データのサスティナビリティ、という観点から、この課題にもきちんと取り組んでいただけるとありがたいと思っております。

このあたりでお困りの方は、企業でも図書館博物館文書館文学館でもご相談にのりますので、ぜひご連絡ください。 特に、この関連の仕事を担当し始めたけど、何の話をしているのかよくわからない…という人は、なるべくサポートいたしますので、当方までご連絡をお願いいたします。

あるいは、自力で勉強しようという人には、『IIIFで拓くデジタルアーカイブ』(文学通信)をおすすめします。書店で購入することもできますが、オープンアクセスでも公開されています。

なお、データ作成側でも自衛措置を講じた方がよいのですが、それを可能とするためにはオープンライセンスで公開していただくことが重要になります。