2024年末版:人文学にデジタル技術を応用する研究に関する発表場所

 昨日・一昨日に開催した国際シンポジウムで、人文学資料に人工知能技術を応用する研究をしているが発表する場がない(から知りたい)…とおっしゃっている人がいたので、改めてそういうことに関する情報をまとめておきます。

まず、分野名としては、国際的にはデジタル・ヒューマニティーズと呼ばれるもので、日本ではこのカタカナ表記以外にもデジタル人文学や人文情報学、文化情報学と呼ばれるものも概ねこの種の研究が対応しています。

ということで、まずは情報処理学会の分科会を見てみると、これに関連しそうな色々な研究領域が存在していて、基本的には査読無しで発表できる研究会を開催しています。なかでも「人文科学とコンピュータ研究会」は、年間3回の査読無し研究会を開催しており、人文系でも幅広く色々な分野の人が集まりますので発表しやすいと思います。もちろん、査読無しの発表ですので評価はそれなりにしかなりませんが、むしろ色々と議論できるということに着目していただくのがよいかと思います。

それから、この人文科学とコンピュータ研究会は、毎年12月頃に査読付き発表を集めたシンポジウム「じんもんこんシンポジウム」を開催しています。査読を経るのでそれなりに良いクオリティの発表が集まるように思います。2024年は東北大学で開催され、人文学をターゲットとしてAIを扱う研究発表が多く見られました。

また、そもそも人工知能研究の本拠地である人工知能学会も査読無しで発表できるスロットがありますので、そちらで発表するという手もあります。私は今年人工知能学会でポスター発表をしましたが、結構色々な人が興味を持って質問やコメントをくれました。

もう少し人文系に寄った学会としては、日本デジタル・ヒューマニティーズ学会(JADH)もあります。こちらは年一回の査読付き国際会議を日本で開催しており、来年は大阪で開催です。また、日本語と英語の論文誌も刊行しています。

海外に目を向けると、このJADHが加盟しているAlliance of Digital Humanities Organizations (ADHO)が世界最大級のデジタル・ヒューマニティーズの国際会議を毎年世界のどこかで開催しており、来年はリスボン、再来年は韓国が予定されています。また、このADHOはオックスフォード大学出版局から論文誌を出したり、オープンアクセスジャーナルも刊行したりしています。いずれもSCOPUSに収録されている雑誌ですので業績評価基準が厳しいところでもカウントしてもらいやすいですが、特にオックスフォード大学出版局のものはインパクトファクターもついているので、業績評価という観点ではこの種の分野では結構おすすめなのではないかと思うところです。

他にもたくさんあるのですが、とりあえずこのあたりにしておきたいと思います。お役に立つことがありましたら幸いです。