まずはこちらの画像を見てください。何をしているのかというと、「サイズの異なる写真で、映り込んでいる定規をディープラーニングで解析してサイズをぴったりあわせて」います。 これで、2つの百鬼夜行絵巻のサイズの違い(片方は箱ですが)を、いちいちズームで調整することなく、ボタン一つで確認できるようになりました。
このサイズ調整機能を使うと、同じ二つ絵巻の内容を見るときも、二つの絵巻のなかのつづらのサイズはほぼ同じなのに片方の巻物は上下の余白が少ない、ということが簡単に確認できます。
デジタルアーカイブの画像は、これまで、ともすればサイズ感を見失ってしまいがちでしたが、このようにして簡便に 元サイズ同士の比率を反映した比較ができるようになると、これまでとはかなり印象が違ってくるようになると思います。
同時に、定規をいれて撮影することは、このように、技術の進歩によって非常に重要な要素になり得ることがわかります。
このビューワ自体はこちらで利用できます。ビューワ自体がまだそんなに使いやすくないですが、興味がある人はぜひお試ししてみてください。また、このビューワはgithub上で公開してますので、どなたでもソースコードを持って行って改良することができますので、もっと使いやすく作り直していただけますと大変ありがたく存じます。
さて、このようなものがどういう経緯でできたのかと言いますと、「ジャパンサーチ公開記念 GLAMデータを使い尽くそうハッカソン」という 国立国会図書館で開催されたイベントの中で作成されました。国立国会図書館でディープラーニング技術にも取り組んでいる青池亨さんが、私の無茶な要求に応えて開発して くださいました。
ここでどういうことが行われているのかというと、定規を移し込んだ画像を二つ重ねて表示してからサイズ調整ボタンをクリックすると、 こちらのビューワからは、IIIF Image APIで幅1024の画像のURLを2つ作ってGET Methodで送出し、あちら側では、おうかがいしている限りでは、 定規をディープラーニングで抽出してから、定規の目盛りをごにょごにょして(これはご本人に解説していただいた方がいいでしょう)サイズを取り出し、 二つの画像のサイズ比を返戻してもらいます。サイズ比を受け取ったら、あとはビューワの側でその数値に基づいてサイズを調整します。これで、 サイズ調整に際していちいち定規の目盛りを見ながら調整する必要がなくなりました。
ハッカソンというたったの二日間でこういうものを開発してしまう人が国立国会図書館で働いていて、さらに、そもそもそういう ものを開発しようという検討や、それをアプリに組み込んだりする時間と場を国立国会図書館が 提供してくれる、というのも、なかなかすごい時代になったものだと思います。
定規の入った二つの画像のサイズ比を取得する仕組みはAPIとして青池さんが公開しておられますので、使って見たい方は 上記のgithubのソースをみていただければと思います。この仕組みはさらに色々応用可能だと思いますので、今後の青池さんの ご活躍にはたいへん期待したいところです。