何度かご紹介してきた、Miradorに新規搭載されたLayer機能ですが、これを応用すると、複数に分割された画像をまとめて表示する、ということもできるようになります。ここでは具体例として、カルガリー大学の楊先生のリクエストにより、国立国会図書館デジタルコレクション(国デコ)の「絵師草紙」を試してみました。これは、以下のように分割撮影・公開されています。
具体的な手段を省略すると、これらの画像をIIIF Image APIに対応させて、Mirador用にIIIF Manifestファイルを作成すると、以下のようになりました。
実際にこの画面をMirador上で見てみたい方は、こちらのURLにアクセスしてから、画面の左上にある「絵巻の全画像を表示」というボタンを押してみてください。あとは、通常のMiradorと同じように、すいすいと拡大縮小できたりすると思います。
追記(20170718 1:30AM):その後、「百鬼夜行絵巻」も試してみました。以下のURLにてお楽しみください。
http://candra.dhii.jp/nagasaki/mirador201706/mirador/hyakki.html
これまで、絵巻画像の公開で難しかったことの一つは、横長の超巨大画像をWebからまるごと効率的にアクセスできるようにするためのサーバの準備や画像処理など、だったのですが、このやり方ですと、サーバや画像処理に関しては、通常サイズの画像を扱うのとほぼ同じようにできることになります。まだところどころ課題はありますが、このように、個別画像を公開した上でビューワ段階で統合するという路線は微妙に革命的ではないかと個人的には思っているところです。
<IIIF manifestの書き方>
では、実際にこれをどうするか、という話に入りましょう。
まず先にIIIF Manifest全体をみせろ、という方はこちらをご覧ください。
基本的には、IIIF Manifestで、Shared Canvasを大きくとってそこに画像を配置していくという形になります。ここでは、以下のように、150000x8500ピクセルのShared Canvasを設定して、そこに個々の分割画像を配置するようにしています。ちょっと見づらいですが、
http://dzkimgs.l.u-tokyo.ac.jp/iiif/yang2/2540981/p1
というのがこのcanvasのIDで、その下位に各画像の情報が記述されています。
以下に、個別の画像の情報についてもう少しみてみると・・・
"on": "http....
で始まる行があり、その最後が
/p1#xywh=0,200,8630,8052"
あるいは
/p1#xywh=4415,119,8630,8052"
などとなっています。
この箇所で、「canvas上のどの位置にこの画像が来るか」を決めています。 この 位置情報を適切に記述すれば、よい、ということになります。
ただ、ここで難しいのは、画像を並べる際の座標情報をどう取得するか、です。特に国デコの場合に難しかったのは、画像の境目がぴたっとあわないことでした。これは、絵巻を浮いたままで押さえつけることなく撮影するという国立国会図書館のデジタル化の方針によるもののようですが(ただしこの話は伝聞です)、とりあえず、ぴたっとあわないので機械処理はちょっと難しそうです。
そこで、手で画像の位置合わせをしてその座標情報を取得する、という途方もない作業が必要であるように思えてきます。これをなんとかして効率的にできないものか(しかも手元にあるソフトだけで)、ということで、GIMPを使って比較的効率的に位置合わせ&座標取得をするワークフローを作ってみました。次回記事にて、その詳細をお知らせします。