東京国立博物館の一部デジタルコンテンツがCC BY-NC的な感じに!

昨日知ったのですが、東京国立博物館http://webarchives.tnm.jp/ 配下で公開しているデジタルコンテンツの利用許諾条件(ライセンス)が変更され、以下のようになったそうです。


当館で公開しているデジタルコンテンツ(画像、テキスト等)のうち、 著作権の生じるものについては、特別な記載のない限り当館がその著作権保有しています。

http://webarchives.tnm.jp/ 配下で公開しているデジタルコンテンツ( 画像検索、データベース等)に限り、非商業目的で下記の「デジタルコンテンツ無償利用条件」(以下「本条件」という)を満たすご利用については、特別な手続きを経ることなく無償で複製、加工、出版物やウェブサイトへの掲載等を行うことができます。 利用者は条件に従ってご利用ください。

「東京国立博物館 - デジタルコンテンツの利用について」

 

これは、大変ありがたく、かつ、画期的なものだと思います。いわゆるクリエイティブコモンズライセンスで言えばCC BY-NC(表示・非営利)にあたるものだろうかと思います。

 

『仏鬼軍絵巻』をIIIF対応に

というわけで、さっそく、少しやってみました。こちらのサイトの「画像検索」にて公開されている『仏鬼軍絵巻』というデジタル化資料があります。これは如來や菩薩・明王らの大軍が地獄に攻め込んで亡者を救済するという絵巻で、壮大なスケールの戦いが描かれているのですが、公開中の絵巻のデジタル画像は分割されていますので、まず、それらを一通りくっつけて、IIIF対応にしてみました。マニフェストファイルは以下のURLとなっております。

http://dzkimgs.l.u-tokyo.ac.jp/iiif/bukkigun/manifest.json

このマニフェストURIさえあれば、どこのIIIF対応ビューワでも読み込めますし、色々活用できますので、ぜひ、利用許諾条件の範囲でご活用してみてください…と書きたいところですが、これだけだとなんだかイマイチですので、ちょっと実際にIIIF対応ビューワに読み込ませてみましょう。

 

変体仮名認識システムに

まずは、@2SC1815Jさんによる、変体仮名認識システム付きのIIIF Curation Viewerに読み込ませてみます。

IIIF Curation Viewer with Hentaigana Image Recognition

画像の解像度の関係でちょっと字が小さくて難しいかもしれませんが、文字によってはそれなりに認識できているような感じですね?

 

日本古典籍データセットの『仏鬼軍』と並べて見る

さて、次にいきましょう。実はこの『仏鬼軍絵巻』は、色々なバージョンがあって、特に江戸時代に何度か木版本で刊行されたものは結構流布したようです。ネットでもいくつか公開されています。

ドイツデジタル図書館の仏鬼軍

仏鬼軍 | 日本古典籍データセット

国文研データセット簡易Web閲覧: 仏鬼軍

早稲田大学古典籍総合データベースの仏鬼軍

このうち、国文研データセット簡易Web閲覧のものは、東京大学大学院生の北﨑有帆氏により本文の翻刻がIIIFアノテーションとして付与されていますので、これを例のMiradorで並べて表示させて対比してみると、木版本の挿絵がどういうもの表現をしようとしていたか、ということがちょっと想像できて面白いですね。

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いきなりずらっと並べてしまいましたが、いくつか、以下に、Miradorでのビューへのリンクをご用意しましたので、自分でもビューワ上で眺めてみたいという方は、こちらから見ていってみてください。なお、ビューワでは、各ウインドウの左上のアノテーションボタンをクリックすると翻刻が表示されますので、よかったらそれも試してみてください。

不動明王と五大尊が鬼を攻めているところ

薬師如来と十二神将

船や動物に乗る菩薩達

 

とりあえず、比較的すぐにできそうなことを手元でやってみたのですが、東京国立博物館のコンテンツは面白いものがたくさんありますので、みなさまもぜひお試ししてみていただけたらと思っております。

 

それから、ちょっとテクニカルな話題として、Miradorに関してなのですが、元になっているOpenSeadragonではいわゆるViewport Navigatorが装備されているにもかかわらず、Miradorでそれを有効化する方法を見つけることができておりません。特に巻物的な横に長いものは、Viewport Nagivatorのようなものがないと「どこを見ているのか」わからなくなってしまうことがあり、なんとかしたいところです。この場合、「これだからMiradorよりも他のビューワを使った方がよい」と思う人もおられると思いますが、「とりあえずMiradorを改造してみよう(誰かにやってもらおう)」という方向もありではないかと思います。オープンソースですし、元々、OpenSeadragonでは実装されている機能なので、そんなに苦労せずになんとかなるのではないかと想像しております。あるいは、Miradorの開発チームにそういう要望を投げてみるのもよいかもしれませんが。

 

ということで、最後はやや脱線気味でしたが、今後ともよろしくお願いいたします。