いよいよ、出ました。
IIIF Curation Viewer | 人文学オープンデータ共同利用センター
の重要なアップデートです。
一言で言うなら、
「世界各地の高精細画像で簡単に自分の仮想コレクションを作れるようになりました」
これは、IIIFが目指す世界における重要なマイルストーンの一つなのですが、それが、とてもスマートなインターフェイスで実現されたということに、感動しているところです。
すでに、公式サイトにもいくつかデモがありますが、私もさっそくやってみました。というより、やってみた結果、そのインターフェイスのスマートさに感動しているところです。
作ってみたものは、特にスマートでもなんでもないのですが、魚の顔を少し集めてみました。国会図書館と国文学研究資料館から。つまり、複数の別々の機関のサイトから公開されている画像が、このようにして、一つのビューワ上で一元的に操作できて、その成果も比較的簡単に公開できる、ということになってしまいました。
さて、具体的にどういう風にやってみたのか、みてみましょう。(近いうちに公式サイトからもきちんとしたマニュアルが出ると思いますのでこちらは速報私家版として)、まずはデモ用ビューワにアクセスしてみます。
ここに、例の、IIIFアイコンのドラッグ&ドロップをしろ、ということのようです。そこで、IIIFアイコンを探すのですが、こういう時に簡単なのは国デコImage Wallです。アクセスすると、いきなり画像がずらっと表示されます。これは、国立国会図書館デジタルコレクションから、デジタル化資料中の挿絵や図だけを取り出してサムネイル画像をリストしてくれるものです。そして、ここでリストされている画像を含むデジタル化資料は、その資料全体がIIIF対応になっています。ステマと思われると困るので書いておきますが、国デコImage Wallのシステムは私が作っていてIIIF対応作業も私が(書いたスクリプトで私が)行っています。
そこで、Webブラウザで新規にタブを開いてから、たとえば、「魚」で検索すると以下のような感じになります。スライダを動かすと刊行年での絞り込みもできます。
気に入ったサムネイル画像をみつけたらクリックしてみます。そうすると、以下のように、その画像をもう少し拡大した画像と、IIIFアイコンや、その他いくつかの関連情報がでてきます。しかし、新規にタブを開いた人は、ここでは迷わず、このIIIFアイコンをドラッグして、Curation Viewerのタブに持って行って、タブが切り替わったら、Dropすべき場所にアイコンをDropします。
そうすると、以下のように、その資料の最初のページが開きます。
ここで、左上にある「サムネイル一覧」ボタンをクリックすると、以下のように、サムネイル画像を一覧できますので、気に入った画像をクリックしてみましょう。
そうすると、以下のように、その画像のみが拡大表示されます。ここで、右側の黒い四角いアイコンをクリックすると、範囲選択ができるようになります。
範囲選択をした後、右上にある白抜きの☆印をクリックすると・・・
以下のように、☆が青くなります。(あるいは、白抜きだったものが塗りつぶされます★)。これで、一つの「キュレーション」ができました。
ここで、右上の「キュレーションリストを表示」というポップアップがついているアイコンをクリックすると、以下のように、キュレーションリストの最後に、今切り出した画像が入っていることが確認できます。なお、ここでは、すでにいくつか切り出しを行ってしまっていたので、その最後に追記された形になっています。
これだけでは物足りないので、次に、またWebブラウザで新しいタブを開いて、今度は国文学研究資料館の新日本古典籍総合データベースに行ってみましょう。このデータベースは、おそらく現在、日本古典籍のIIIF対応画像数では最大ではないかと思います。なかなか贅沢な環境ですが、ここで、「魚」で検索すると、以下のような資料がみつかりました。
当然、ここでも、IIIFアイコンがありますので、先ほどと同じようにこれをドラッグ&ドロップすると以下のようになります。
そこで、以下のように、切り出しをして、また同様に、☆アイコンをクリックして「キュレーションリスト」に追加します。
ここで、キュレーションリストを表示させてみると以下のようになりますが、この画面では、これらのサムネイル画像をドラッグすることで順番の変更ができるようになっています。
たとえば、今、最後に追加したサムネイル画像をドラッグして、以下のように、一番最初に持って行ってみます。そして、以下の画面に見えている「エクスポート」ボタンをクリックしてみましょう。そうすると・・・
以下のようにして、今、追加した画像のうち、矩形領域で指定した箇所が拡大される形で、選んだ画像がキュレーションリストの順番で表示されていきます。
という感じで、とても簡単に、「各地の画像を集めた仮想コレクション(と私は仮に勝手にそう読んでいます)ができるようになってしまいました。もう一つ、各地の画像を集めた仮想コレクションを作れるシステムとして、IIIF Toolkit with MiradorというOmekaのプラグインがあるのですが、あちらが注釈(アノテーション)の付加や地図年表上のマッピング、作業担当者の認証制御までできてしまう代わりにサーバシステムが必要であるという重さを背負っているのに対して、Curation Viewerは、とにかく軽量で、用意すべきものもほとんどありませんし、操作性もよく考えられているように思われます。今後も、この調子で、シンプルなままで機能を拡張していっていただけたらと思っているところです。
もう一つ特筆すべき点として、このCuration Viewerは、広く用いられているIIIF対応ビューワであるMiradorやUniversal Viewerではなく、Leafletというビューワをベースとして使っています。LeafletのIIIF対応版というのが開発公開されているのですが(これの開発者のJack Reedさんは来週、来日して講演やワークショップ参加をしてくださいます)、さらにその先を行くものであるように見受けられます。Leafletベースという点は、他の有名ビューワがいずれもOpen Seadragonをベースにしていることに鑑みると、IIIFの世界に多様性を確保するという点でまず重要ですが、シンプルで使いやすいインターフェイスであるということもその存在意義を高めているように思われます。
ということで、簡単な紹介になってしまいましたが、IIIF Curation Viewerの重要なアップデートをお祝いしつつ、作成者の方々に感謝しつつ、今後のさらなるデジタルアーカイブの発展の礎ができあがりつつあることを目の当たりしている実感とともに、とりあえず筆を置きたいと思います。