ジャパンサーチ(BETA)を探検 その5 少しマニアックな使い方

これまでの記事に引き続き、ジャパンサーチ(BETA)の探検です。再び、検索してみようとしますが、こういう風にして使ってくると、検索がメインのサイトではないというメッセージなのではないか、という気がしてきますね。実際にそういうところを目指しているのかもしれません。そうすると、細々と検索するユーザは微妙にお呼びでないのかな・・・という気もしてきますが、それでも検索できますので、見捨てられたわけではないと思って再びやってみます。一応、簡単なframeで検索できるようなラッパーを作ってみようとしましたが、セキュリティの関係で、外部サイトからframeで読み込めないように設定されているみたいで、残念ながら、そんな簡単な回避策は許されないようでした。まあ、何かブラウザブラグイン的なものを作ってしまえばよいのだろうとは思います。どなたか、ささっと作ってくださるとありがたいですね。

ということで、再び、ジャパンサーチ(BETA)の検索インターフェイスにて、今度は、少しマニアックな感じで資料を探してみます。2-3世紀くらいの仏教思想家、龍樹で検索してみます。この人は、インドの人なので、本名はサンスクリット語でナーガールジュナという名前なのですが、中国にてこの人の著作が翻訳された際には龍樹or竜樹と表記されて、日本にもその名前で伝わっています。というわけで、それぞれの名前で検索してみます。龍樹と竜樹は1,586件、ナーガールジュナは35件、nagarjunaは322件、Nāgārjunaは107件、नागार्जुनは2件でした。インドの人でもこれだけの情報がジャパンサーチに入っているというのは、日本の知的関心の幅広さを示しているようでありがたいことですが、とりあえず同じ人の名前なので、まとめて引けるとありがたいですね。VIAFだと http://viaf.org/viaf/8711937 ですので、ここから別名情報をとってくるという手もあるかもしれませんね。

ちなみに、ここまでと違って、仕事で使うこともあるので、ウェブ公開でないコンテンツでも、有用そうなものがあれば入手のための手続きなどもしていいような話です。そこで、まずは「龍樹」の検索結果にてファセットを眺めてみます。検索結果の内容を想像するには、「データベース」「カテゴリー」「サブカテゴリー」あたりが有用でしょうか。「サブカテゴリー」で「古典籍 1」となっているので、とりあえず選んでみます。と、「京都大学附属図書館 立命館大学アート・リサーチセンター」というところのものがヒットします。タイトルは「五蔵論・龍樹菩薩眼論・香譜」となっていますので、このタイトルでヒットしたのでしょう。リンクをたどってみると、所蔵機関 京都大学附属図書館、連携機関 立命館大学アート・リサーチセンター、という風になっています。デジタルコンテンツの二次利用条件は、教育利用○、非商用利用○、商用利用×、となっています。リンク先の「ARC古典籍ポータルデータベース」に行くと、「国文研検索」「NIJL閲覧」等のボタンが表示されていて、ボタンをクリックすると、国文学研究資料館のサイトにジャンプするようです。原所蔵者は京都大学附属図書館、となっています。あれ?と思って、京都大学附属図書館のデジタルアーカイブの方で「龍樹菩薩眼論」で検索すると、2件ありました。こちらのサイトでは、利用条件は「画像二次利用自由(所蔵表示)」という風になっていました。本家サイト(?)で付与されている利用条件もジャパンサーチで確認できるようになっているといいですね。なお、この資料の画像は、国文学研究資料館でも見られますが、本家の京都大学附属図書館のサイトの方がさくさく閲覧できるような感じです。また、京大附属図書館では2件ヒットするところがジャパンサーチでも国文学研究資料館の検索でも1件しかヒットしないので、新しくデジタル化されたメタデータがまだ共有されていないということなのでしょうか。ここら辺は、最新情報と同期させられるとよいのですが、京都大学図書館のメタデータがジャパンサーチにもう少しダイレクトに流れるようになるとよいのでしょうか。

内容については、京大図書館の富士川文庫に入っているとのことですので、おそらくは医学書です。ざっと見た感じだと、目の病気についての解説書のように思えます。さて、これは果たして、今回目指している(VIAFで指している)龍樹の著作だろうか、ということも少し気になりますので、もう少し詳しい情報はないものかと思って「龍樹菩薩眼論」でジャパンサーチで検索してみましたが、特に他にヒットしないようです。では・・・と思ってGoogleで検索してみると、色々ヒットする中に、「ナーガールジュナと医術--『龍樹眼論』の成立と展開 」という論文PDFがみつかりました。CiNiiでも論文情報はヒットしますが、論文PDFへのリンクは張られていないようです。これをざっと読んでみると、龍樹に仮託されたインド医学書の中国語訳のようです。やはり、古典籍のようなものは、このようにして解説してくれている論文を読むことができるとずいぶん扱いが楽になります。(というか、こういうものがなければ、ジャパンサーチで見つかる貴重なコンテンツをうまく扱うのはちょっと難しいのではないかという気もします)

ということで、これは、現在検索している龍樹とは直接には関係ないようであることがわかりましたので、次に行きましょう。コンテンツをウェブ公開に限定してみると、「大智度経論巻第六十九」という、これも龍樹に帰せられている資料がColBase提供コンテンツとしてリストされているので、このコンテンツ情報ページに行ってみます。デジタルコンテンツの二次利用条件はColBaseですのでCC BY相当ですね。「解説」を見ると石山寺旧蔵の写本となっていて、すべてのメタデータを表示してみると「銘文等」の項目に「天平六年歳次十一月二十三日 針間国賀茂郡既多寺衣縫造男国書写奥書 白点朱点あり」となっています。これはなかなか貴重な感じの資料ですね。そこで、ColBaseに行ってみます・・・と、京都国立博物館の所蔵品で、画像も3つ表示されていますが、これは巻物の最初と途中と最後の三枚だけを表示しているようで、全体像はわからないようです。こういう場合、奥書さえ見られればいい人には十分ですが、本文まで見たい人には結局内容はわからないので、デジタルコンテンツありとすべきかどうか、悩ましいところです。また、 奥書には天平六年…写と書いてあるので、天平六年という年号はメタデータとして拾っておくことができてもいいかもしれませんね。これは、たとえば、HuTimeの暦変換サービスにこの奥書を読み込ませれば、「C.E. 0734-12-22」を返してくれますので、そういうものを適宜フックするような仕掛けができるといいかもしれませんね。針間国賀茂郡既多寺という地名も、オープンデータとして提供されている歴史地名データを見ると播磨國 賀茂郡というところまでは位置情報がとれました。ググってみると、兵庫県加西市殿原町の殿原廃寺に比定されているという情報もありますので、地図上での座標情報もとれそうですね。ちなみに、他に既多寺にまつわる資料はジャパンサーチにはないのかな、と思って検索しようとしてみますが、そうするとやはり、ドラッグしてテキスト選択すると検索ボタンがポップアップする、というインターフェイスがあると便利ですね。現状だと、右上の虫眼鏡アイコンまでマウスポインタをドラッグしなければなりません。タブキー押し下げで検索窓表示&フォーカスでもいいんですが、今、ここのテキストをいじっているタイミングだと、タブキー押し下げでそうなるのはかえって直感に反しているような気がするので、ここはやはりポップアップ検索ボタンがほしいところです。

既多寺で検索すると、出ますね。奈良国立博物館所蔵の大智度論 巻第六十六(播磨国既多寺知識経)も表示されます。こちらはメタデータのところに 「時代世紀」という項目があって、「奈良時代・天平6(734)」と記載されていました。機械可読にもなっているといいですね。(あるいは、今のところは この文字列をパースするしかないでしょうか?)一方、先ほどのものとは違い、奥書の情報はありませんでした。が、リンク先のColBaseの 当該ページに掲載されている画像は見ることができました。それによると、十一月二十三日写となっていました。京都国立博物館のものと同じ日ですね。 残念ながら、こちらも画像は部分的にしか提供されていませんでした。

既多寺の大智度論で見てきましたので、他にもないのかなと思ってググってみると、 神戸市立博物館に、巻第九十一があるようです。 拡大表示もできると書いてあるのでわくわくしながらクリックしてみると、「Adobe Flash Playerはブロックされています」。めげずにFlashを許可して表示してみると、 奥書には同じ日付が書かれていました。そういえば筑波大学図書館にも似たようなものがあったなと思って見てみると、こちらもFlashで、巻第七十でした。それから、島根大学のは巻第六十二、巻第六十七 みたいですね。島根大学のはIIIFにも対応しているものもあるので、ジャパンサーチにも入ると見やすくなりそうですね。京大にも巻第四十があり、こちらもIIIFに対応しています。なお、IIIF対応のものに関しては、こちらのサイトで「大智度論」で検索するとリストされるようになっています。

ジャパンサーチでの「既多寺」の検索結果リストでは、全国書誌というデータベースからもヒットしてますので、律令国家史論集という本のコンテンツ情報ページを開いてみますと、既多寺の表記はありません。あれ?と思って メタデータをすべて表示してみると、色々表示されるのですが、文字が多い上に詰まっていてなかなか見つけられません。こんなときはページ内検索です。 ・・・というわけで、みつかりました。内容細目で「既多寺大智度論と針間国造」というのがありました。かなりばっちり、この写本をめぐる状況に ついての情報が得られそうです。著作権が切れている本ではないので、ウェブで見るのは諦めた方がよさそうです。ですので、 ここから先、近くの図書館に蔵書がないか探してもよいのですが、買ってもいいような気がするので、 日本の古本屋サイトで検索してみます。・・・もうちょっと安ければ買ってもよかったですかね。しかし、きちんと理由付けをした上で、全国書誌のデータベースや NDLデジタルコレクションのコンテンツ情報ページからは、日本の古本屋サイトへのリンクを張っておいていただくと、便利で、かつ 市場活性化にもつながるのではないかと思ったところでした。(新刊本もなんとかできるとなおよいかもしれませんが。) 既多寺でググってみると、他にもいくつか論文等がヒットしますので、そういうのも見てみるとより理解が深まりそうです。

という感じで色々調べていくことができますが、そうすると、調べたことを残しておいて、他の人にも使えるようにできると楽かもしれません。 論文の内容をそのままコピペすることはできませんが、要約くらいで、きちんと参照元も記載しておくなら、有益な情報提供ということに なるでしょう。ジャパンサーチ(BETA)としては、そういうことも視野に入れているように見えますので、次回はそこら辺にもう少し注目してみましょう。