バラバラになった各地の西洋中世写本断片をまとめて表示:IIIFの活用例

また少し時間がたってしまいましたが、今回は、6月にヴァチカンで開催されたIIIFカンファレンスで仕入れてきた話を一つご紹介します。IIIFが当初目標としていた、「バラバラになって各地の機関に保存されている西洋写本の断片をまとめて表示する」という機能が、ようやく、IIIFの規格に基づいて、IIIF対応の汎用フリーソフトMiradorビューワを用いて可能になったようです。

 

まずは、こちらのURLをご覧ください。ここでは、以下のように、挿絵の部分が切り取られた写本の画像が表示されます。

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ここで、画面左上の「Layers」というタブをクリックしてみてください。そうすると、以下のようなパネルが表示されるはずです。

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ここで「visible」というチェックボックスをクリックしてみてください。そうすると以下のようになって…

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切り取られた挿絵のところに以下のようにしてこの絵が表示されました。

 

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挿絵のところを拡大してみてみましょう。

 

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この挿絵が本来ここに来るべきものなのかどうか、筆者にはよくわからないのですが、このような機能のデモンストレーションとしては十分ではないかと思います。今回はフランスの国立図書館が公開する画像CNRSが公開する画像を組み合わせたということになっているようです。Manifestファイル(この資料の画像群の表示の仕方等を定義するファイル)のこのページの部分は以下のようになっていました。

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ちょっと字が小さくて読めないかもしれませんが、ちゃんと見たい人は直接このmanifestファイルをご覧ください。IIIF Image APIで記述された二つの画像のURLを一つのキャンバスにリンクされています。書き方としては、もっとたくさんの画像を一つのキャンバスにリンクすることも可能であり、Miradorの今回のバージョンでは、実際に、もっとたくさんの画像を重ねあわせて、さらに透過度も変化させることができるようです。開発者の方々に大感謝です。

 

 これまでも何度も同じことを書いてきているようで恐縮ですが、10年前にはすでに、このようにして絵を重ね合わせる機能だけであれば、Webで提供することはできたはずです。しかし、IIIFが画期的なのは、その機能をオープンな共通規格として実現可能としたことであり、その規格がすでに世界中の多くの有力機関で採用されつつあるという点なのです。結果として、誰もがこのような機能を使って、世界中に点在する多様なデジタル文化資料を様々な形で自在に活用できる道を開いた形になっています。この重ね合わせる機能に関して言えば、今はまだManifestファイルを頑張って書かなければなりませんが、しかし、書き方は標準化されているので、近いうちに、これを簡単に書けるような仕組みを誰かが作って公開してくれるかもしれない、ということが期待されます。デジタル文化資料の活用において、オープンな共通規格の重要性は、これからますます明らかになっていくだろうと思っております。

  なお、今度、7/27の午後に、人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)にて、IIIFを主に扱うセミナーが開催されます。会場は、国立情報学研究所(NII)、です。そちらでは、こういった話を、私だけでなく、色々な専門の方々がそれぞれの視点からお話してくださる機会になりますので、なかなか稀有な機会になると思います。お時間がございましたらぜひご参加ください。