サーチしないジャパンサーチ(BETA)~ジャパンサーチを探検 その6

前回記事の最後で触れたように、検索しない使い方も提供されているようですので、少し気分を変えて、検索しない場合はどういう風に使えそうなのか、ちょっとみてみます。

「ジャパンサーチ」と言われると、検索窓を探してしまいますが、その名前を忘れてみて、たとえば、「これは検索サイトではない、ジャパンコンテンツだ」などと念じながら ジャパンサーチのページを開いています。そうすると、少し気持ちが変わって、扉ページで提供されているものをじっくりみてみようか、と思うようになりました。

まずは扉絵を見ていると、じわーっと動いています。解説もついています。なぜこのコンテンツが選ばれているのかよくわかりませんが、 なかなかよい文化資料ですね。しばらく見ていると次の画像に切り替わって、またじわーっと動いていきます。この動き方は、 資料にあわせてカスタマイズしているのでしょうかね。掲載時に、簡単にこの動き方の設定ができるようになっているといいですね。 一次停止ボタンとか次の画像に移るボタンもありますが、次の画像に移るボタンは、扉の絵がたくさん提示されるようになることも 想定されているのでしょうかね。蓄積されていくとどうなるでしょうね。また、「あのとき見た扉絵」というのが、あとから 再確認できるとありがたいかもしれないですね。誰かの物語の一部になるかもしれません。扉絵をクリックすると扉絵の コンテンツ情報が表示されたりお気に入りボタンも出てきたりするので、自分でノートにメモしておくことはできそうですね。 ただ、このノートのデータ、LocalStorageに入れておくだけだと、持続性とか再利用性とかちょっと難しいですが、 今後はどうなるでしょうね。

その下にいくと「ギャラリー」というのがあります。「富士山」「もう一つの東京オリンピック」など、お役立ち情報とともに デジタルアーカイブ画像が引用されたりしているようです。これもなかなかいいですね。デジタルアーカイブの活用の 仕方の模範的な例だと思います。ただ、このあたりになると、むしろ、書籍や雑誌のような有料コンテンツと 競合してしまわないだろうか、というあたりが少し気になります。競合と言っても、無料であれば有料とは競合には ならないのですが、有料コンテンツにお金を払う人がますます減るのではないかという気もします。お金が回らなく なると、それでやっていくプロが減っていってしまうので、全体としての質の向上もやや難しくなっていくような 気がします。いずれは無料コンテンツが世界を制覇するのかもしれないとは思いますが、そうだとしても、 プロが急激に減ってしまうよりはプロとの共存期間を経て無料コンテンツが鍛えられていくような流れがあると いいのかなとも思います。また、利用は無料でも制作者はどこかからお金をもらう、という在り方ももちろん ありますし、ギャラリー制作者はお金をもらっている(人もいる)かもしれませんが、そうすると今度は、 お金を払う人に内容が多かれ少なかれ制限されてしまわないかなということも気になります。本件一つをもってどうこうという わけではないのですが、全体的な流れとして、オープンデータ・オープンアクセス・オープンサイエンス といったことについて考えてみると、有料であることによって保たれてきた自由や質の在り方が、 今後ずいぶん変わっていくのだろうとも思います。

さて、話が少し脱線しましたが、もう一つ気になるのは、Wikipediaとの関係でしょうか。正直に言えば、 Wikipedia大好きです。特に、よく採り上げられますが、「地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipedia」の記事は最高です。近代日本の医療の歴史だけでなく、甲陽軍鑑や明治期の薬の広告、地図、統計情報等々、Web上のマルチメディアコンテンツ を縦横無尽に駆使した圧倒的な記事です。結構昔からこの記事を何度も読んでいますが、着実なアップデートを重ねて、 新たなWebコンテンツもあれこれと吸収しながら現在に至っているという点も素晴らしいことです。 この記事などはジャパンサーチの「ギャラリー」に載っていても全然おかしくないものではないかと いう気がします。

経験上、似たようなものがあれば1つにまとめればよいという考え方は必ずしも適切であるとは限らないと 思っておりまして、むしろ、似たようなものが複数共存することで相互に高め合っていけるとよいのではないかと 思っております。似ていることが、双方の目的意識を先鋭化してレベルアップにつながるということも 多々あるように思います。ですので、似ているからと、どちらかにしてしまえ、ということではないのですが、 何かこう、よいものは何らかの形で連携できるといいのかなあ、とは思っております。

また、「ギャラリー」に今後何を載せていくか、ということも気になるところです。個人的に関心のあることが 掲載されてくれるとありがたいとは思いますが、時事的なことでデジタルアーカイブを渉猟する時間がないとき など、「ギャラリー」で適宜情報を集めて掲載しておいてもらえると、見やすくなってありがたいとも思います。 ただ、そういう情報にお金を払わなくて済んでしまう世界というのは、どういうことなんだろうか、ということも 考えてしまうところです。個々の画像は著作権切れてますし、情報収集の費用を低減させることでより広い 読者に情報提供できるようにして教育・学習の機会を増やしていくことは大事ですし、ネットにばらまかれる 色々なおかしなデマ情報に対抗するためには、きちんとした情報にも無料でアクセスできるようにすることは 大切です。ただ、個々の読者ではなく、スポンサー側(この場合政府自治体も含む)が執筆の対価を支払う(= 執筆者の選択や執筆内容にも発言力を持つ)という世界がどういう方向に進んでいくのか、ということは やはり注意しておかざるを得ないだろうと思っております。もちろん、クラウドファンディングとかもあります ので、場合によってはそういう方向を考えることになるのだろうかとも思いますが、いずれにしても、紙媒体を前提とした 商業出版が形成していた世界とはかなり違ったものになっていくのでしょう。

さて、脱線が続いてしまいましたが、「ギャラリー」は色々見られてよいですね。こんなコンテンツがあるなら、 こういうコンテンツもないだろうか、と、ジャパンサーチ自体を検索してくれる人も出てくるかもしれません。 さあ、検索・・・と、右上の虫眼鏡アイコンをクリック、でしたね。やはり、すぐに検索にいけるようになって いるとありがたいですね。

それと、ジャパンサーチはコンテンツがどんどん増えていくという前提だろうと思いますので「ギャラリー」も それに応じて、時々でもアップデートできるとありがたいですね。あるいは、細々追加するのはどんどん 大変になっていくので、むしろ、新規登録コンテンツを見て 関連する情報があればサジェストするようなものをユーザ向けページに組み込んでおくという手もある かもしれないですね。「この記事の執筆以降に追加された関連コンテンツ」のような項目で。 そうすると、メタデータ項目として「ジャパンサーチに追加された日時」もあると便利でしょうかね。

というわけで、きれいなものを見て心が洗われたような気持ちになっていますが、ジャパンサーチ(BETA)をサーチしないでの探検はこれくらいに しておきたいと思います。