ジャパンサーチ(BETA)を探検 踊り場にて

前回の記事では、ジャパンサーチ(BETA)の入り口あたりを探検してみました。 ダンジョンで言えば、地下一階を探検して、下層に向かう最初の階段にたどり着いたあたりかなと思います。そこで、踊り場にて、ちょっと一休みしながら 地下一階の探検を振り返ってみたいと思います。

前回記事で検索した資料は、木版資料でした。一つの内容について、複製が物理的に多数存在するものであり、また、さらに、 もしかしたら、補刻や、版木全体の彫り直しなどによって、一見すると同じものに見えるが実はちょっと異なっているものも あるかもしれない、というものです。実際のところ、国立国会図書館や国文学研究資料館から公開されている画像は、 ざっと見たところ同じものであるように見え、スタンフォード大学図書館から公開されているものも色は異なるものの、 基本的には同じもののようです。詳しく比較してみたり、重ねて透過してみたりすると、もしかしたら違いが 発見できるかもしれないが、それはそれで楽しい作業になりそうです。あるいは、すでに誰かが研究発表をしている こともあるかもしれません。その場合は、それを追体験して楽しむこともできそうです。

ところで、「南瞻部洲萬國掌菓之圖」のように、同じ内容の資料が日本各地、さらには世界中に広がっている例 というのは他にたくさんあります。いわゆる古典籍と呼ばれるものは大抵そうです。さらに言えば、たとえば 「源氏物語」であれば、江戸時代に別々の出版者が作って刊行した、内容はほとんど同じだけど版式が異なるものがたくさん残ってますし、 木版出版が広まる前は写本で伝えられてきており、同じ源氏物語でも形態や内容に少しずつ異なるものが様々に残されています。 ジャパンサーチというからには、そういった資料をうまくまとめて探せるようになっていると、とても ありがたいところです。

ではジャパンサーチがそういうまとめ作業まですべきなのかと言えば、それはちょっと大変過ぎます。 むしろ、既存のデータをうまく使う方向を考えるとよいのではないかと思います。古典籍の書名であれば、 国文学研究資料館の日本古典籍総合データベースというものがあり、たとえばこのように、 世界中の源氏物語の書誌情報を集めた上に、画像公開しているものについては画像へのリンクもはってあります。 ジャパンサーチの古典籍版とも言えるもののようにも思えますが、いずれにしても、たとえば 「源氏物語」で検索した時に、このデータへのリンクのURLが検索結果一覧の左側にある ファセットに表示されてくれるか、「書名典拠情報」などとして検索結果一覧の一番上に出てくれたりすると、 税金で構築されている二つの巨大なデータベースが納税者にとって使いやすい形で提供されることになると 思いますので、ぜひ期待したいところです。双方に余裕があれば、双方のデータをマージすることで お互いに作業効率をあげるようなことが可能かもしれませんが、それはまた別途、少し先の課題として 考えていただくのがよいのではないかとも思います。

また、同様に、人名に関しても、いわゆる人名典拠データベースが いくつかありますので、人名検索した際には、典拠情報データベースへのリンクも同時に表示されて くれるとありがたい、というか、とても便利なのではないかと思う次第です。

それから、もう一つ、振り返ってみて、なんとかしていただきたいなと思ったのは、「出典情報を 書きやすくしていただきたい」ということです。せっかくデジタルデータを集めているのですから、 利用者に出典情報を調べさせて書かせるのではなく、「このテキストをコピーして貼り付ければ出典情報として 使える」というようなテキストを、コンテンツ情報ページに表示しておいていただけると大変ありがたい のです。あるいはさらに「copy」ボタンも用意して、クリックすればクリップボードにコピーされる という風になっているとなおありがたいです。この種の機能は、たとえばSAT大蔵経テキストデータベースなどでも 10年くらい前から提供しているような、出典を重視するデータベースでは割と一般的な機能ですので、 そんなに難しいことではないと思います。

ということで、地下2階の探索に向けて、また少し準備をしてみます。