ジャパンサーチ(BETA)を探検その1

まだベータ版ですのでこれから色々良くなっていくところだと思いますが、ベータ版をレビューすべしという声があちこちから聞かれるので、私も少し触ってみることにしました。

色々な使い方があると思いますが、まずは、ちょうど用事があったので、江戸時代の有名な地図、「南瞻部洲萬國掌菓之圖」をみてみました。これは、 18世紀くらいのもので、古いですが、それほど珍しいものではなく、Web上での有名どころでは、 Devid Rumsey Map Collectionにて色刷りのものが公開されており、これが スタンフォード大学図書館からはIIIF対応で公開されていて、 さらにWikipediaでもこの画像を見ることができます。また、数ヶ月前の東洋文庫@駒込のあたりでの展示会でも同じく色刷りの現物が展示されていました。

さて、検索しようとしてみますと・・・、どこから検索したらいいのでしょうか?うーん?タブキーを押し下げするとキーワード入力欄に 飛んでくれるかな?と思って押し下げしてみたらいかなかったので、ううーん?と思って画面を見回してみると、右上に虫眼鏡のアイコンが あります。これをクリックしてみたら、出ました!検索キーワード入力欄です。「太刀」「埴輪」「祭り」「天皇」という ボタンも一緒に並んでいますので、クリックするとキーワード入力欄に入力してくれるのかな・・・と思って、ボタンをクリックしたら、 いきなり検索結果に飛んでしまいました。このタイミングでいきなりHTTP/1.1で、80リクエスト、1.1MB transferredはちょっときついですね。 手元がおぼつかない私のようなおじさんだと、海外出張中につい間違って押してしまって、500MBくらいしかない時もある 貴重なレンタルWIFIルータの使用可能データ量を無駄に使ってしまいそうです。どちらかといえば、クリックしたら キーワードが検索窓に入って、その後、検索ボタンクリックか、Return/Enterキー押し下げで検索してもらえると ありがたいですね。

さて、太刀の検索結果も見てみようと思いましたが、検索結果が結構多いので、これはまた今度ということにして、 「南瞻部洲萬國掌菓之圖」を検索してみます。そうすると、おお、出ましたね。一番上に国立国会図書館の 資料、次は「国会図書館 立命館大学アート・リサーチセンター (ARC古典籍ポータルデータベース)」、 次は「東京国立博物館 独立行政法人国立文化財機構 (ColBase)」、 「デジタルアーカイブシステムADEAC 国立国会図書館 (国立国会図書館サーチ)」 という感じになっています。この記載の仕方、いわゆる「つなぎ役(正式名称をよくわかってなくて申し訳ありません)」 の名前と実際の提供機関の名前が並んで、さらに、その次に、リンク先データベースが並んでいるという風に なっているのかなと思いましたが、検索結果としてリストされたコンテンツに付与できる少ない情報の中に この情報を入れるべきなのかどうか、という点は少し気になります。提供機関やつなぎ役(?)からすると 載せてもらわないと貢献がみえないので困る、ということで理由も気持ちもよくわかりますが、これほど 格好いいデザインを作れるのであれば、そのあたりも何か少しうまいソリューションを作り込んで いただけるのではないかなと思います。

さて、とりあえず、ユーザとしては、まずは画像を見たいので、一番上の国立国会図書館のものを クリックしてみます。そうすると、EuropeanaのようにIIIFコンテンツをそのまま表示してくれていて、 拡大縮小もできます。これはなかなかよい感じです。二次利用条件もどういう風に利用できるか わかりやすく提示されていて、パブリックドメインであることがすぐわかる上に、 「教育利用」「商用利用」「非商用利用」でそれぞれ可能かどうかも○がついているのでよくわかります。 ただ、この表示の仕方だと、いわゆるCC BY-SAにおける「SA」をどう表現できるのか、というのが ちょっと気になるところです。それはまた次の機会に見てみましょう。

メタデータもRDFで取れるようになっているので、これはなかなか便利ですね。

ただ、画像としては、古地図なのに分割撮影しまっていて(これはなんとかして もらいたい)、色もついていないので(これはややミーハー気味)、もう少し 別のものはないかなと思って次のものを見てみます。。。と思って、検索結果一覧に戻る リンクを探してみますが、うーん?よくわからないので、とりあえずブラウザの「戻る」 ボタンで戻ってみます。そこで、2つ目をクリックしてみます。そうすると、 所属機関は国立国会図書館、連携機関は立命館大学アートリサーチセンター、となっています。 「所属」というのは、メタデータの所属が国立国会図書館になっているというようなこと なのでしょうか?ここでは、CC BY-NC-SAなので商用利用に「×」がついています。 ただ、この表記だと、SAが表現されないのがちょっと気になりますが、(?)アイコンを クリックするとポップアップでライセンスの解説が表示されるのでよいでしょうかね。さらに ポップアップをクリックすると、CCの本家ページへのリンクもありますので、 利用者側が気をつけさえすれば万全ですね。

さて、このコンテンツでは、リンク先のページにいけば画像が見られるということのようですので リンクをクリックすると、時々見かけるARC古典籍ポータルデータベースの検索結果一覧の ようなページが表示されます。URLのパラメータを見るとf1==NDL-2542466という風になっている ので、ここで複数コンテンツがリストされるということはなく、あくまでも、ID指定で そのコンテンツの情報のみが表示されるということなのでしょう。

・・・と思ったのですが、このリストで「ORG閲覧」ボタンをクリックすると、先ほどみたNDLの コンテンツにジャンプするようです。一方、「国文研検索」ボタンをクリックすると、国文学研究資料館の 日本古典籍総合目録データベースの当該書誌情報にジャンプするようです。ここでは 国文学研究資料館所蔵の画像へのリンクが表示されているので、それをクリックすると、 インフォコム株式会社謹製の旧ビューワで画像が表示され、新しいIIIF対応ビューワへのリンクも 表示されるようです。さらに、旧ビューワ上で国文学研究資料館が作った詳細書誌情報への リンクも表示されていて、これはかなり以前からずっと要望していたものでしたので、いつのまにか 実装されていたようで大変胸熱です。 やや脱線しましたが、ついでにもう少し脱線すると、そういえば、国文学研究資料館が公開している画像が ジャパンサーチでの検索結果リストには表示されなかったような気がしますが、これはどういうことなのでしょうか? 国文学研究資料館は連携機関に入っていますので、検索語の具合でヒットしなかったということなのか、 それとも、日本古典籍総合目録データベースはアートリサーチセンター経由でジャパンサーチに 情報提供することになったのか、一般ユーザである私には色々想像するしかありません。 いずれにしても、アーチリサーチセンターは、それ自体が日本文化ポータルサイトとしての機能を 追求している面があるのだろうと思いますが(そしてそのことはとても貴重な取り組みだと思います)、 ジャパンサーチユーザからすると、 独自コンテンツなのか、いわゆるパスファインダー的な情報提供なのか、がジャパンサーチ上で わかるようになっているとありがたいところです。これは、アートリサーチセンターというよりも 「つなぎ役」的なところで対応できるとよいことかもしれません。 ついでに、そうすると、ジャパンサーチ上ではCC BY-NC-SA(表示-非営利-継承)という ライセンス表示になっていますが、リンク先デジタルコンテンツはPDMとCC BY-SAですので、 「デジタルコンテンツの二次利用条件」と記載されているものは、メタデータのみに適用される ものと考えるべきでしょうか?・・・と思って色々見てみると(色々見てみないといけないようですが)、 コンテンツの情報を記載しているページの中に表示されている3つの連携先リンクのうち、 「収録されているデータベース」のところの連携先リンクをクリックすると、 メタデータの利用条件についてもまとめられています。これを見る限りでは、 リンク先の条件はリンク先によるが、メタデータはCC BY-NC-SA、ということのようですね。

さて、次のリンクをクリックしてみましょう。「東京国立博物館 独立行政法人国立文化財機構」からの 情報です。「解説」のところが充実していて良いですね、

仏教宇宙観における南贍部洲は須弥山の南方の大海中に位置するインド大陸をさすという。本図は仏教系世界図として初の木版図で、広く流布し、多くの通俗版に影響を与えた。右上の日本の南に「亜(あ)墨(め)利(り)加(か)」、左上に「イタリヤ」など、欧州からの知識が反映されている。 (出典:ジャパンサーチColBase https://jpsearch.go.jp/item/cobas-141163

これはきっと、詳細に書かれている場合にのみ 表示されるようになっているのでしょうね・・・と思って、そういえば他のものは どうだったかと思って戻ってみてみました。冒頭の国立国会図書館からの情報ページ(なんと呼べばいいのかな? とりあえず「コンテンツ情報ページ」と仮に呼んでおきます) で、念のため、メタデータリストの一番下にある「すべて表示」をクリックしてみると、なんと、こんな解説が付与されてました。

頭陀浪華子製図并撰。浪華子とは鳳譚また僧濬で、華厳宗再興の祖とされる。仏教的世界観にもとづく世界図。南瞻部洲とは須弥山の東西南北にある4つの大陸のうち南の大陸で、仏教的世界観ではここが人間の住む世界とされる。北が広く南に尖ったかぶら型で、もともとは唐・天竺・日本の3国をその世界の主体とするが、西洋からの世界知識の伝来をうけて両者の融合がはかられる。本図はその代表例で、北西部に群島状のヨーロッパが描かれ、日本の南には南北アメリカ大陸と比定できる陸塊が見える。題額脇に多数の典拠資料リストがある。板行の南瞻部州図としては最初、かつ最詳の図として広く流布した。元の題簽は残るが改装。 (出典:ジャパンサーチ国立国会図書館デジタルコレクション https://jpsearch.go.jp/item/dignl-2542466 )

これは、コンテンツ情報ページのところで最初から表示されているとありがたいですし、欲を言えば、これくらいの情報が、検索結果リストを眺める際に なんらかの形で表示してもらえるとありがたいところです。ポップアップとかでもいいです。

さて、東京国立博物館のColBaseでは「デジタル化されていません。」となっていて、リンク先も画像は出ないようです。そうすると、 コンテンツ情報ページのコンテンツの二次利用条件というところは、あくまでも、画像などのコンテンツのことを示していて、 メタデータのことを指しているわけではない、と考えるべきなのでしょうね。メタデータの利用条件については 「収録されているデータベース」の「ColBase」をクリックすると、政府標準利用規約(第2.0版)であることが 確認できます。

このあたりは、ベータ版なので、正式版ではメタデータのライセンスとコンテンツのライセンスをわかりやすく区別して それぞれコンテンツ情報ページにて提示していただけると、私のようなユーザでも使いやすくなってありがたいところです。

さて、ここまで来たので、4つ目も見てみましょう。「デジタルアーカイブシステムADEAC国立国会図書館 (国立国会図書館サーチ)」と なっているものです。コンテンツ情報ページを見る限りでは、メタデータのみの提供のようですが、この 資料の特徴を表す情報としてここで見えるものは「古典籍書誌データベース、 西尾市岩瀬文庫」のみです。 「すべて表示」ボタンをクリックすると「内容細目」のところに少し詳しい解説が出ています。そこで、この解説を 参照を提示しつつ引用しようとして「国会図書館サーチ」を見てみると「利用条件は連携先によって異なります。下記「連携先一覧」をご確認ください。」 となっています。そこで、「デジタルアーカイブシステムADEAC」をクリックして見てみると、ポップアップが表示されます。ここで、 メタデータのクレジットは、

「本サービスで提供するメタデータの一部は、デジタルアーカイブシステムADEAC(TRC-ADEAC株式会社が運営)を利用してデータ公開している各機関に由来する。ライセンスは<クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 パブリック・ライセンス> https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/legalcode.ja である」といった表示が望ましい。」

という風に書いてありますが、

「デジタルアーカイブシステムADEAC 船橋市西図書館 所蔵」となっています。今回見ていたコンテンツは船橋市西図書館 所蔵ではないので これではないだろうと思って、このポップアップには、「デジタルアーカイブシステムADEAC「利用規定」」というリンクもあるので これをクリックしてみますと、要するに、「各ページで確認するように」となっています。ふー。ちょっと疲れてきました。さて、そこで、 コンテンツ情報ページのタイトルの下にある「国立国会図書館サーチ」をクリックすると、TRC-ADEACサイト上の「西尾市岩瀬文庫/古典籍書誌データベース」 での書誌情報が表示されます。ページの一番下に「利用規定」のリンクがありますので、これをクリックすると、 ようやく確認できました。が、 書誌情報に関する扱いについては特に記載がないので、引用するだけなら、普通に引用として参照元を示せばそれでよいという ことかもしれません。

なお、ここまでの利用で少し思ったことですが、ジャパンサーチには古文書と古典籍の情報がたくさん 入っているはずで(これからも増えるはずで)、しかし、古文書と古典籍は、探し方や見つかってからの扱いがかなり異なっていて、 こだわりポイントも結構違うのではないかと思います。そのあたりへの配慮を組み込むための仕組みも ある程度できるといいのかもしれないと思ったところでした。

それから、今回のケースだと、「見たい日本の資料は海外サイトやWikipediaにある」という状況なので、そういうのもいずれ なんとかできるといいですね。

さて、もう少しヒットしたものがありますが、今日はここまでにしたいと思います。これくらい書いておけば、 UXの専門家なら、どこをどうつなげばここでの苦労を半減させられるか大体把握できると思いますので、ご検討のほど、よろしくお願いいたします。