お手元の画像をIIIF画像と透過で重ねて比較してみる

 IIIFを日本で紹介し始めた当初から、「公開はできないけど手元に持っている画像を公開画像と比較できないのか」と、主に仏教文献学的な研究をやっている方々から言われてきました。理論的にはもちろん可能なのですが、比較的簡単に、しかしサーバにアップロードせずにできるようにするには、少し作業に集中する時間が必要で、なかなかできず後回しになっておりました。

 

 今回は、それをできるようにしたという話です。まだベータ版という感じで、もっと使いやすくすることができると思うのですが、とりあえずの必要な要件である

・IIIF画像を対象として

・諸般の事情により手元にあるが公開することができない画像を

・重ね合わせて透過しながら拡大縮小しつつ比較する

ということをできるようにしました。

SAT大蔵経データベースの方からアクセスするとIIIF対応仏典画像を簡単に読み込みできますが、その場合は、任意の仏典画像をIIIF Linkingタブで表示してから、以下のボタンをクリックしてください。

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ツールに直接アクセスする場合は以下のURLからアクセスできます。デフォルトでは富嶽三十六景のうちの一つが表示されます。

http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT2018/iiiflink/overlayimgs.php

操作に関しては、あまり上手でなくて恐縮ですが、動画を作成してみましたのでご笑覧ください。

 


SAT IIIF Overlay Imaging / お手元の画像をIIIF画像と重ね合わせて透過で対比

 

主要機能は全部 Javascirptで書いてますので、余すところなく公開されています。WebページとしてはPHPで生成している部分がありますが、それはURL中にManifest URIやCanvas URIを含むアクセスが来た場合に読み込んで表示するためのものです。たとえば以下のように、Canvasまで指定できるようになっています。URLパラメータをつけなくても上記のようにアクセスできます。

http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT2018/iiiflink/overlayimgs.php?manifest=https://dzkimgs.l.u-tokyo.ac.jp/kakouzou/049_1/manifest3.json&canvas=https://dzkimgs.l.u-tokyo.ac.jp/kakouzou/049_1/canvas/0028.json

 

とにかく、画像アップロードをしなくて済みますので、権利関係の問題を回避しやすいことはもとより、そもそも作業が速くできます。ただ、画像のサイズ調整と位置合わせは、やや面倒です。CODHの方で似たような本の差異の抽出を自動化する研究もありますので、あちらの成果とうまく連携ができるとよいのですが、とりあえず気になっていて自分で確認したかったものを比較的簡単に比較できるようにするところから始められるといいだろうかと思って作成したところです。上記のもの以外にも、かぶせ彫りをしたと言われる嘉興蔵と鉄眼版(とおぼしきもの)を対比してみたりしております。字形に微妙な違いがあるのが興味深いところです。

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 また、宮川真弥さんによる「覆刻版における版面拡縮現象の具体相 : 匡郭間距離比較による版種弁別法確立のため」という論文が最近刊行されましたが、このご研究の成果ともつながってくるところがあろうかと思います。

 

 なお、画像のサイズ調整・位置合わせなど、「自分ならもっとうまく作れる」と思われる技術系の方々もたくさんおられると思います。とりあえず、永崎がこのようにして作ってみる程度にはニーズのある話ですので、よかったらぜひ、改良版を作って公開して皆で共有できるようにしていただけますと大変ありがたく存じます。