TEI P5ガイドラインの最新版(v3.5.0)でルビを。

 Goobiの記事の続きを書こうと四苦八苦していましたが、その間にまた色々別な仕事も入ってきておりまして、その関係で一つ便利なものを作りましたのでお知らせです。

 

 TEI P5ガイドラインは着々とアップデートを続けておりまして、現在はv3.5.0となっております。日本語訳も、エレメント・アトリビュートの説明に関しては、かつて鶴見大学の大矢一志先生がやってくださったものに、TEI協会東アジア/日本語分科会を中心とした翻訳会のボランティアによる追加作業が加わり、日本語でもずいぶん使えるようになってきています。

 ところで、TEI P5ガイドラインには、まだ「ルビ」がありません。既存のタグを流用することでなんとかしのいでいるところではありますが、「ルビ」という融通無碍なルールにぴたっとハマるエレメントは、やはり既存のものではちょっと難しいところがあります。ルビは、発音を示すものであることもあれば、意味を示すこともあり、もう一つの本文として扱うこともできます。それぞれの文章中での位置づけを既存のエレメントに対応づけるという方向性も考えられなくはないですが、それをしてしまうと「ルビ」の多義性を損なってしまうこともあると思います。作業効率から考えても「ルビ」は「ルビ」として扱った方が日本の文化的コンテクストには適切なのではないかと思うのです。

 

 そのようなことで、「ルビ」タグを使えるようにTEI P5ガイドラインをカスタマイズしたいのですが、もちろん、TEI協会ではカスタマイズのためのツール Roma を提供しています。このツールの使い方は、簡単なものですが、こちらの記事に日本語のものが用意してあります。で、ごにょごにょとカスタマイズした結果、以下のように記述できるようになりました。

<eaj:ruby>
 <eaj:rb>第一巻</eaj:rb>
 <eaj:rt>だいいっかん</eaj:rt>
</eaj:ruby>

これを使えるようにして、かつ、大半のスキーマの説明等も日本語で表示されるようにしたRNC形式のスキーマファイルはこちらにご用意しておきます。ダウンロードしてOxygen XML EditorなどでTEIファイルにスキーマ割り当てをすればルビタグを使えるようになります。

 ただ、ここで、一つ注意しておいていただきたいのは、カスタマイズしたスキーマを割り当てた際に、ルートエレメントを以下のように書き換える必要があるということです。

<TEI xmlns="http://www.tei-c.org/ns/1.0" xmlns:eaj="http://www.example.org/ns/eaj">

カスタマイズの際に追加した名前空間をルートエレメントに追記するということです。このままコピペしていただいても大丈夫かと思います。

 これで、「<eaj:ruby>はどこでも使えて、<eaj:rb>と<eaj:rt>はその中でのみ使えて、同時に後者2つがなければ<eaj:ruby>はエラーになる」という風に検証されるはずです。

 

 ついでに、Romaで作成したODDファイルもこちらに置いておきますので、このスキーマをよりよく改良したくなった人はぜひご利用ください。

 

 なお、TEIによる日本語資料の作成のための環境整備につきましては、TEI協会東アジア/日本語分科会のサイトで着々と進められています。日本語によるガイドラインや、青空文庫テクストのTEI化・ツールの作成など、徐々にではありますが、日本でもとっつきやすいものにしていく予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします。