以前からあちこちで言及してきているのですが、海外先進国の大手文化機関では、システムを自前で導入するためにエンジニアを雇っています。1人ではなく数人~数十人雇ってチームを組んでいるところもあるようです。雇用のための費用は、組織として支出しているところもあるようですが、アンドリュー・メロン財団をはじめとする各種外部研究助成金で雇用することも多いようです。そうすると、助成金が切れたら、それで雇われていたエンジニアの人達はどうなってしまうのか・・・と言えば、どうも、外から見ている限りでは、新たに助成金をとった他の機関に転職したり、そもそも文化機関系ではないところに転職したりしているような感じです。そのようにして仕事を続けていく中で、ではその仕事は雇用している各文化機関からのみ評価されているのかと言えば、それだけではなく、世界各地で大中小様々な会合が催されているようです。これらの会合を通じて情報交換や仕事の相互評価といったことが行われ、さらに、こういった仕事をしている人達にとってよりよい成果をあげていくためにはどのように仕事をしていくべきなのか、といったことも検討されているようです。
この種のコミュニティの動向で面白いと思ったのは、このブログでもよくご紹介しているIIIFを通じた動きです。日本で文化資料データベースの仕様を決める時は、発注担当者が色々勉強したりIT企業の担当者から話を聞いたりしながら、よさそうなものを選んでそれにあわせた仕様書を作成する、という感じになるところが多いと思います。一方、IIIFに関しては、一部のメジャーな文化機関に属するエンジニアの人達が、自分達で規格を作ろう、と決めて、自分達で研究助成金を取ってそれを活動資金としつつ規格の仕様を定め、できあがった仕様を自分の所属する機関に採用させた、という流れになっているようです。このような流れは以前からうっすらとありましたが、IIIFについてはそれがかなり強く表れたような感じがあります。また、今後、エンジニア同士の横のつながりがますます強化されていく中で、こういったコミュニティにおける議論はさらに重要になっていくのではないかと想定されます。
そのような会合の多くは、デジタル図書館連合がWebサイトにて情報集約しています。
中でも特に大きめの規模のものについては、(個人的には参加したことがないものもありますが、その場合はプログラムや登壇者から見て判断しています)、以下のようなものがあるようです。
(ほぼ)毎年開催:
隔年・数年に一度開催:
他にも大きめのものがあるかもしれませんが、海外先進国で進められている文化資料デジタル化の雰囲気を味わったり、今まさに議論されていることを把握したかったりした場合は、こういう会合に顔を出してみるとよいのではないかと思います。
また、日本でも、文化資料関連のデジタルアーカイブ方面の活動が、こういった流れにうまく対応できるようになると、投資がより効率的になって良いのではないかと思っております。その意味では、企業の若手のエンジニアやこの種の開発に興味がある研究者の方々にご参加いただけるような形になるととても良いと思いますので、周囲にそういう若手をかかえておられるシニアの皆様は、ぜひ彼らをご支援していただけますと幸いです。