読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

デジタルアーカイブ学会設立総会に向けて期待すること

さて、本日は夕方からデジタルアーカイブ学会設立総会に参加する予定です。すでにWebサイトには「デジタルアーカイブ学会設立趣意書」が公開されていますので、目指す方向はここで提示されているものと思われます。

 これを拝見してまず思ったことは、学会に副題をつけるとわかりやすくなるかもしれない、ということです。たとえば、「デジタル知識基盤社会のための政策形成に向けて」などといったような感じです。「デジタルアーカイブ」という呼称だけだと、「何がデジタルアーカイブか」という終わりがなく生産性の低い議論を呼び起こしがちなので、それを避けるための一工夫があるとよいのではないかと思ったところです。

 趣意書を私が理解したところでは、かつてキャリア官僚が、最近はシンクタンクが担ってきたようなことを、これからは学会が担うのだ、という話のように読めます。かつて県立大学の教員をしていた頃に地方自治体で某総研会社の人と仕事をした身としては、確かに、シンクタンクの力は大きくて、しかもそこにそれなりのお金も流れているようだった、ということを思い出しつつ、ああいう仕事を学会と名付けられた組織が担うことが可能なのだろうか、ということは若干気になるところではあります。知る限りでは(すごく狭い経験ですが)、シンクタンクは、調査力だけでなく見せ方が上手で、そこにも相当のリソースを投入しているであろうことが想像されますので、それにとって代わろうとするなら、同じ事を肩代わりする必要はないにせよ、相当な説得力のある何かは提示できる必要があろうかと思います。それが、「中央省庁から民間企業、地域の草の根の活動までが、高高い次元で車座的に話し合い、共に考え」ることなのだろうと想像していますが、そのような場をどういう風に形成していくのか、今後に期待したいところです。

 それから、「デ ジタルアーカイブに関わる諸学会、研究者を繋ぎ、共通の認識基盤を形成しながら、こうした具体的課 題に取り組んでいきます」とのこと、設立準備委員会が主導してこれを進めているのだと思いますが、これについては、とにかく、うまくやっていただけたらと思っております。

 最後の段落では、すべてのステイクホルダーへの呼びかけ、価値のあることだと思います。難しいことではありますが、声が大きな人だけでなく、関係者皆が参加意識を持てるような形になってもらえたらと思っております。ちょうど10年前に、この種のステイクホルダーの問題について人文科学とコンピュータシンポジウムで発表したことがありますが(「人文科学のためのデジタル・アーカイブにおけるステイクホルダー」)、この趣意書での議論は政策としての基盤というところから立ち上げていこうということなので、話としてはもっと大きくなるのだろうと思います。この種の問題に技術・実務・研究の面からそれなりの期間関わってきた経験からしますと、とりわけ、人事ローテーションでたまたまデジタル知識基盤に数年間の仕事として関わる人たちと、仕事でデジタル知識基盤を利用するユーザや所蔵者、創作者、提供者、作成者(企業含む)等の立場でずっと仕事として関わり続ける人たち、それから、たまにちょっと関心を持ったときだけ利用するようなライトユーザ(これは、ヘビーユーザと区別すべきでない、という議論もありますが、区別した方が良い状況が確かに存在します)との感覚の違いをうまく乗り越えて議論できるような場を作ってくださるとありがたいと思っております。